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日記
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前に言ってた、恋愛に挑戦してみようパート2。
むしろコレがパート1。
コレの方が先に案があったけど、途中で止まってた。
そのあと、清司君の話が明後日の方向に飛んでいったから、もう一度挑戦してみた。

どう考えても私が一番おかしい。


-------------------------------













「ありがとう」

 勇気を振り絞って告白したあたしの前で、彼女は優しく笑って、言った。
 いつもと変わらない、見惚れるような綺麗な笑みで。

「でもごめんね」

 おはようと声をかけるときと全く同じ、壁を感じさせない気軽な微笑みで。




「私、妹が一番だから」













 フられた。
 あたしは今日、親友にフられた。
 とはいっても放課後どこかに寄らない?と誘ってふられたとか、宿題写させて!と頼んでふられたとか、そんなごくごく当たり前に浮かべるような話の流れでの「ふられた」じゃない。
 好きだと告白して、フられた。
 もちろん友情じゃあ、ない。
 恋愛の意味で、だ。
 ・・・・・自分でも分かってる。それこそおかしい。だってあたしはどこをどうとっても、それこそ見た目も考え方も生き方だって正真正銘女の子で、親友の彼女はあたし以上に女の子らしい「女の子」だった。そこら辺の男子と運動場をかけまわったことなんかなさそうな、高校生にしては純粋そうな、ちょっとお嬢様っぽい、そしてとても綺麗な笑みを浮かべる彼女。彼女が女以外に見える人は目が腐ってるか第三の目を開眼してどこかにいっちゃってる人くらいだろう。
 それでも、あたしが好きになったのは彼女だった。

 どうしようもない。あたし自身そう思う。

 別に女の人が好きだとか、そんなんじゃない。いや普通にむさい男を見るよりは女子と一緒にいたいと思うけど、それって普通だし。第一そんなの恋愛感情じゃないし。だってあたしの初恋は近所の幼なじみだし、中学生の時に付き合ったのもクラスの男子だ。彼女が好きだと気付いたときにへこんだのは紛れもなく、あたしだ。バカじゃないのと思った。本当にどうしようもない。
 だいたい同姓に憧れるのって、よくあることだ。特に思春期の年齢には。17歳の身としては思春期に引っかかってるのか微妙なんだけれど(あたしが一番精神的に不安定だったのは中3の時だし)、女の子同士でやたらべたべたしたくなるし、男子も同姓でべたべたしてるし、心理学を学んでたっていう先生が授業でそんなことを言ってた。同性間で疑似恋愛に走って、でもそういうのって大きくなるにつれて大抵は異性が気になるようになるとか、そんなの。
 あたしのもそんなのだ。勝手に思いこんで元気だけはあるから暴走して。
 よくある友情の思いこみ。
 一過性の勘違い。
 あははーバカだねー、あたし。

 ・・・・・・・・。

 違う。

 あたしは、本気だった。

 悩んだ。すごく悩んだ。悩んで悩んで。おかしいんじゃないの自分ちょっといい加減にしてよとか思ったけど、でもどうしようもなかった。
 だって、好きなんだ。
 すごくすごく、好きなんだ。
 性別とか全部気にならなくなるくらい。綺麗なんだ、彼女は。顔とか、立ち振る舞いとか、そんな外見的なものじゃなくて、もっと根本的なところで、すごくすごく綺麗だったんだ。

 好きだった。どうしようもなく、好きだった。
 好きで、仕方なかった。

 だから、もう黙っているのも無理だったから砕けるの覚悟で思い切って告白したのに。

 親友という意味でじゃない、恋愛感情で好きなのだと理解した彼女は、優しく笑った。
 いつもと変わらない、見惚れるような綺麗な笑みで。
 おはようと声をかけるときと全く同じ、壁を感じさせない気軽な微笑みで。
 彼女は理解する前も理解した後も、変わらないいつもと同じ笑顔で、ごくごく普通に言った。

『妹が一番だから』


 性別以前の問題だった。


 ・・・・・うん、彼女が妹さんのことを恋愛対象で見ているわけじゃないってのは、さすがに分かる。
 でも、彼女にはそんなのきっと関係ないんだ。彼女の一番は妹さんで、それ以上になる人がいないってだけだ。
 むしろ理由を言ってくれただけ、彼女の中であたしの順位はけっこう高かったんだろうと安心する。
 あははー良かった・・・・・・・


 虚しい。


 なんだろう、すごく泣きたい。
 思えば、こんなに人を好きになったのって無かった気がする。幼なじみがいつのまにか彼女を作ってた時も悲しくなったけどそれ以上になんとなく悔しかったし、中3の時のカレは高校が違って自然消滅した。ちゃんと好きだったと断言できる。
 でも、これだけ悲しくなったのは初めてで、どうしていいかわからない。悲しい。痛い。苦しくて、仕方ない。さっきからじわりじわりと涙が這い上がってくる。でも泣けない。喉が時々ひきつるけど、やっぱり泣けない。あと一歩で涙は出てこない。なんでかな、こんなに痛いのに、でも泣けなくて良かった、だってここ学校だし。放課後で誰もいないとはいえ教室だし。もう高校生だし。顔見知りが来るかもしれない場所で泣くなんて、カッコ悪すぎる。
 けど人目も構わず子どもみたいに泣き叫んだら、この苦しさは少しはマシになってくれるのかな。みっともなく涙で顔をぐしゃぐしゃにして、見苦しく金切り声で大声で叫んだら、痛くて痛くて仕方ない心もだいぶ楽になるのかな。さっきから胸をかきむしりたくて仕方がない。苦しい寂しいつらい痛い、どうにかして何とかして誰か助けて。
 なんて。大声で叫んでみようか。
 あはは、あり得ないくらい気持ち悪い顔なんだろうな。あたし超笑える。
 なんかしんどくて笑えないけど。
 頭だけはだいぶ冷静で、何だか逆につらい。ぼんやりとして霧の中にでもいるみたいだ。さっきからどうでも良いことばっかり考えてる。いい加減虚しすぎてしんどくなってきた。胃の辺りが、すごく重い。

 もう帰ろう。

 それでもなかなか足が重くて、机の上に座ったままぼんやりしてると、がらっと音がして教室の扉が開いた。
 動きたくなかったけど、なんとなく後ろの扉の方を見る。
 見覚えのある男子がいた。
 また一気に疲れた。見覚えがあるどころか、もう一人の親友だ。

「・・・・・・なんでいるの」

 もう動きたくもなかった。話すのもいやだ。
 出てきた言葉は思ったより苛ついたカンジになった。八つ当たりだけど今日くらいは仕方ない。大目に見てくれても良いでしょ、だって気を使う気力なんか全くない。
 けどソイツは、怒らなかった。それどころか口を開いた。

「彼女に告白したのか」

 驚いた。ひどく驚いて、今まで動けなかったのが嘘みたいな勢いで振り返った。
 ソイツは扉を閉めたまま一歩も動いていなくて、じっとこっちを見ていた。
 なんで、それを知ってるの。
 呆然とした。どうして知られてるの。あたしが大事に抱えてた恋を知ってるの。
 唐突に怖くなった。コイツに知られていたということは、もしかして、彼女にも知られていたのだろうか。みにくい、きたないと隠してたものはとっくに彼女にばれていたというのだろうか。
 けれどあたしの表情を読んだのか、彼は静かに首を振った。

「あいつにはバレてなかったと思う。あいつは・・・・お前には悪いけど、周りの感情に興味なんか、ないだろ」

 素っ気ないフリで、でも隠しきれない罪悪感と一緒に、そうはっきり言った。その様子に、言いにくいなら言わなきゃ良いのにと、場違いだけどちょっと笑いそうになった。そうか、彼女にはばれていなかったのか。その言葉に安心して、でもばれていなかったことに落ち込んでる自分がいる。なんて勝手なんだろう、あたし。ほんと、さいてい。
 残酷な子だった。
 彼女にとって、周りがどう思おうが関係がなかった。自分にとって大事かそうでないかがはっきりしてて、しかも一つ一つにきちんと順位がついていた。大事なもののためなら、それ以下の順位のものは全て迷いなく捨てられるような子だった。
 大切にしながら後悔もなくそれを捨ててしまえる子だった。
 彼女にとって、1位以外は、大切だけど同時に捨ててしまえるものだった。
 残酷な子だった。
 無邪気に残酷な子だった。
 だからこそ、純粋に、綺麗だった。
 だからこそあたしは、惹かれたんだ。

「バカだなあ」

 彼は言った。けど言葉とは違って、そこにはからかいも、軽蔑も、同情も浮かんでいなかった。
 だからこそ、すとんとその言葉が胸に落ちてきた。
 ほんと、バカだ。
 心底そう思う。
 でも、仕方ないよ。バカだけどさ、気持ちをごまかすのもできたはずだけどさ、頑張れば黙っておくこともできたのかもしれないけどさあ。

「好きだったんだ」

 そうなんだよ。

「だって、好きだったんだ」 

 言葉にするともっとはっきり分かる。ごめんね。君はなんとも思ってないだろうけど。友情だろうか恋愛だろうが、やっぱり君には関係ないんだろうけど。それでも。ごめんね。本当に、ごめん。友情を裏切ったことには変わりないから。友情じゃなくて、ごめん。自分勝手に伝えて、ごめんね。

 でも、好きだったんだ。
 好きだったんだよ。

 けどこれで終わった。苦しくて楽になりたくて伝えて、やっぱり苦しくて仕方ないけれど、でもこれできっとちょっとは楽になるよ。さようなら、あたしの恋の物語。こうしてバカな女の子は降られてしまいました。終わり。どこにでもあるような、先の見える物語。安っぽい、でも切実だった、あたしの恋。
 あたしはそうして本を閉じた。もう、終わりなのだ。
 終わったのだ。
 後は時間がどうにかしてくれる。今は酷い顔をしてるだろうけれど、そのうち何でもない顔をして彼女と会話できるだろう。気持ちはすぐには消えないだろうけど、それでも痛みはだいぶなくなるはずだ。
 あたしは立ち上がろうとした。けど、ずっと立っていたもう一人の親友は、そこで初めて動いた。
 一歩だけ、足を前へ踏み出したのだ。


「俺は、ずっと見てたよ、お前を」


 あたしの動きは、そこで止まった。親友と目がぶつかった。
 彼はさらに一歩、踏み出した。

「俺はお前のことが好きだよ」

 何を言われたのか分からなかった。
 あたしは彼を見た。彼もあたしを見ていた。
 親友はひどく、切羽詰まった顔をしていた。
 ああ、どこかで見たよその顔。
 彼女に告白する前、トイレで鏡に映ったあたしの顔がそこにあった。
 あたしは呆然と彼を見ていた。彼も呆然と、あたしを見ていた。

 事態は急変。急転直下のジェットコースター。
 閉じたと思った本には続きがあった。
 あたしの手を離れた本は彼が拾った。その物語がどこへ行くのか、あたしには全く予想も付かなかった。








----------------------------

案の段階からこんな話なので、「どうしてこうなった」とは言うに言えない。
前のよりは恋愛色は強くなってる、と思う。
なんか予想の斜め上の色をしてるけど。

明らかに「彼女」だけ浮いてる。
案が浮かんだのは身代わり~を書いた直後で、「身代わり~」に出てきたのは妹だったのでバランスを取ろうと「彼女」は姉にしよう、という発想だったはず。
バランスの取り方が明らかにおかしい。
なんでこうなった。


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